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読書レポート_三谷/No53


『教養としての投資』 奥野一成 著

全国にある農協が集めたお金を運用するのがその上部団体である農林中金。その中で農林中金バリューインベストメンツ株式会社という法人を作って長期投資を専門に行っているのが著者。よく見るデイトレーダーのようなことをやっているのではなく、世界中の企業を選別して買ったら売らないを原則として株式投資をしている。基本的に経済成長している前提なら株式はずっと持っていたら価値が上がる。あとはどこの会社の株を買うかという問題だけだ。事実ウォーレンバフェットの投資もその基本姿勢で行われているのはよく知られている。著者もバフェット氏から大きく影響を受けているようだ。私自身も投資には興味があり個人的にもしている。だから投資の考え方としては非常に学びの多い一冊だった。同時に私は経営者なのでこのように世界中の企業を見定めている人はどのような企業が将来性があり利益を上げ続けていくと判断しているのかという視点を学べば自社の成長の役に立つと思った。そして投資とは何かというそもそもを学ぶことは経営にも役に立つ。著者も投資の定義を「時間と少しばかりのお金を有効に配分して、自分という道具を磨き、自分よりも優秀な他人を働かせる。これが投資です」と述べている。まさしくこれは経営そのもの。そして経営者は同時に投資家であるとも言っている。「経営」と「投資」を切り分けないことが大事だと。松下幸之助や本田宗一郎などは経営者として偉大な人と伝えられているが同時に投資家であることはあまりしられていない。しかし自己資金や借り入れで設備投資を人材投資をして未来の経済環境や景気動向を見通しどこにお金を使っていくのかという判断をしている。これはまさしく投資。やはり投資家の目線があるのとないのでは経営者として大きな差がついてしまう。投資をしなければ事業は育たないからだ。また利益とは「お客さんにとっての課題を発見し、その代を解決することで得られる対価」なのだから利益が上がり続けるということは人々が抱えている課題をどんどん解決しているということと定義している。そのようなことができる企業に投資することは大前提としてさらに「高い付加価値」「高い参入障壁」「長期潮流」の3つの要素を持っている会社に投資しているとのこと。逆を返せばこれら3つを押さえている企業は長期的に伸びていくということだ。自社がこれら3つの要素を捉えて事業をしているかという点検が必要。そして経営者として将来の決定をを行っていくうえでこれら3つを実現できる事業構造を作っていくことが大事だ。判断の基準として今後留めておく。

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