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読書レポート_藤井/No17


『杜子春 -ちくま日本文学全集 芥川龍之介より-』 著 芥川龍之介

今回は課題図書に文学書を選出。芥川龍之介の杜子春と言えば、小中学生の頃に読んだ方も多いと思います。私も十数年ぶりに読み返しました。私が考えるこの小説のテーマは「人間の飽くなき欲と情」です。二度、大金持ちになった杜子春は欲望のままに贅の限りを尽くしますが、その度にお金目当ての人しか寄ってこず、人間の浅ましさと身勝手さを知ります。人間に愛想を尽かした杜子春はその後、仙人という人間を超越した存在になるという更なる欲を満たそうとしますが、その試練の最中、地獄で酷い目に合いながらも子を守ろうとする両親の姿を見せられ、お金で繋がる人の縁とは正反対の存在を知り両親の無償の愛に涙します。親の命か仙人への道かという選択を迫られた杜子春は、人間に失望していたにも関わらず最後には人間の情と、人間らしい生活を選ぶという結末を迎えるのです。私は地獄での両親こそ「人間らしい感情」の代表として描かれているのではないかと思っています。欲深く自分勝手な感情で動くのも人間。しかしどんなに大金持ちになっても、高い身分になっても、「人間らしい感情」を忘れてはいけないと教えてくれているのではないでしょうか。杜子春も両親の姿を見て「人間らしい生き方」を決意する訳です。現代社会やビジネスにおいても共通することが言えます。権力や立場を盾に相手を思い遣る心や義理や人情を無くしてしまえば、本当に大切なものを守ることはできないのだと、大人になった今、本書を読むことで改めて学ぶことができました。

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